川根本町を知ったきっかけはなんですか?
隆行:私は子供のころ、家族旅行で大井川鐵道のSLに乗って川根本町に来たことがあります。その時は、確か井川まで言った記憶がありますが、それ以来、何度か川根本町を訪れる機会がありましたので、自然豊かなところという認識がありました。妻は、私と一緒に訪れるまでは、この町のことは全く知りませんでしたね。
綾女:私には、いつかゲストハウスをやりたいという夢がありました。自然いっぱいの中でお客さん、特に外国人の方を迎えられるような宿をやってみたいと、そんな風にずっと思っていたんです。
結婚して、しばらく住んでいたところが住宅街だったので、いつか自然があるところに引っ越して宿をやる準備をしたいなと。夫は農業をやるのが夢でしたから、畑でとれた野菜を宿のお客さんにふるまう、そんなことが実現できたらいいなと思いながら、2人で、長野県や三重県など、色々な移住候補地を見て廻りました。東京で開かれる移住フェアにも参加したりして情報を収集していたんですよ。
でも、なかなかピンとくる場所には巡り合えませんでした。
川根本町に訪れてみての印象はいかがでしたか。
あるとき夫が「そういえば静岡県の川根っていう地域に行ったことがあるよ」って教えてくれ、その年のゴールデンウイークに初めて川根本町を訪れました。で、電車の車窓から見えた山々や大井川の景色にすごく感動して。「あ、ここだ」ってピンときちゃったんですよ(笑)。それに、その時に会った地域の人たちもすごく優しくて。移住相談に乗ってくれた方や、農家民宿やゲストハウスのご主人などが、「いいじゃない、ぜひ、この町でやろうよ」って言ってくれたんです。他の地域に行ったときは「同業者が増えるのはちょっと…」みたいな反応も多かったのに、この町では全然拒否される感じがしなくて。みんな商売っ気がないといったら失礼なんですけども、「みんなで一緒にやっていこうよ」みたいな、そんな優しい人たちに出会えたことも、この町に決めた理由なんですよ。
隆行:私は、農業ができればよかったので、場所へのこだわりはそこまで強くありませんでした。ただ妻の思いがすごく強かったので「じゃあ川根本町を検討してみようか」と。それから幾度か川根本町を訪問し、移住担当の方に相談しながら、住むところを探しました。空き家を7.8件は見に行ったかな。その節は、担当の皆さまに大変お世話になりました。
すごく思い切って決断をされたようですが、実際に住んでみて、生活の変化はありましたか?
綾女:こちらでは、近くに小児科が無かったので子供の発熱時とかに島田市の小児科に通っていたんですね。それはちょっと大変だったかな。でも今年、家山地区に小児科の先生が赴任されたので、すごく助かっています。やっぱり近いと安心感がありますから。
日常的な買い物などは近くのスーパーとかで足りますし、何ならネットスーパーもありますから、そこまで不便に思ったことは無いです。
隆行:けっこう忙しくなりましたね。長男が生まれて1年くらいのときに移住しましたので、やはり収入の面の不安はありました。仕事はもちろんですけども、農業をやる準備だったり、子育てのことだったり、宿をやる準備だったりと、金銭的なことと詰めのバランスを考えながらやってきた感じです。今、幸いなことに、半日勤めて半日農業をやる、そんなフレキシブルな対応をさせてくれる会社にお世話になっていますので、すごく助かっています。
隆行:今は赤米というもち米の一種を、家山地区の田んぼをお借りして作っています。これを白米と混ぜておにぎりにすると、もちもちした食感でうまいんですよ。今度、川根時間というお茶に関するイベントがあって、そこで赤米おにぎりを出すつもりです。
綾女:最近、ご飯のお供というか、ご近所のおばあちゃんとかから佃煮なんかをいただくんですが、それが家々で味が違っていて、どれもおいしいんですよ。私も真似したくてレシピを教わるんですが、昔から受け継がれてきた家庭の味を今も守っているんだなあってすごく感心しながら教わるんです。ほんと料理名人なおばあちゃんが多いですよ。他にも、藁ぶき屋根の家のミニチュアを自分で作ったり、石ころにきれいな絵をかいたりと、いろんな名人がこの町にいます。そういう人の話を聞くだけでも楽しいですよ。
話は戻りますが、赤米おにぎりの具材は、近所のおばあちゃんから教わった佃煮にする予定です。すごくおいしいですよ。
宮嶋さんご一家の、今後の展望を教えてください。
今年の夏、浜谷さんの紹介で、中国から来た中学生の子5人がうちでホームステイしたんです。私たちは中国語は話せませんし、英語も大して話せないので不安でしたが、スマホの翻訳アプリなんかを使って、その子たちとコミュニケーションをとりました。他の宿の方からのアドバイスで一緒にスイカを食べたり、夜には花火をやったりして、楽しい日を過ごしました。私たちにとっては宿をやるための予行練習にもなりましたし、うちの子たちにも良い経験だったんじゃないかな。
宿をオープンするにあたって、まだまだやりたいことは山積みですし、お金もかかりますので、その辺のバランスを考えながら準備を進めているところです。子育てもしながら、仕事もしながらですから、なかなか一気には進みませんが、それでも家族で協力しながら、夢の実現に向けて進んでいます。
川根本町は、地域の付き合いを大切にしている人が多いから、そういった人付き合いが苦にならない人が移住に向いているとアドバイスを送る宮嶋さんご一家。
「お父さんがつくった野菜をお母さんが料理してお客さんにふるまう、そんなアットホームなゲストハウスをつくりたい」。そう話すあやめさんの夢は、周りの人たちの力も借りながら、今日も実現に向けて進んでいます。
取材日:2024年10月