以前住んでいた町のことを教えてください。
私たちは北海道の東部、オホーツク海に面した町(斜里町)に住んでいました。その町は市街地のエリアと山の方のエリアに分かれているんですが、私たちは山に近い方に住んでいました。家からスーパーまで車で40分、大きなショッピングセンターに行こうと思えば1時間半くらいかかる場所でしたので、川根本町よりも田舎の町という感じでしたね。
北海道と川根本町でずいぶん離れた場所ですが、川根本町をどうやって知ったんですか?
長男が3歳の時、静岡県の大井川鐡道という鉄道路線で実物の「トーマス号」が走っているということを知ったんです。長男が大好きでしたから「じゃあ行ってみよう」と。家族旅行で初めて川根本町を訪れました。長男が生のトーマスやジェームス、パーシーを見てすごく大喜びして。それが川根本町を知ったきっかけですね。
移住することは以前から考えていたんですか?
はい。夫とも「長男が小学生に入学する前に移住したいね」って話していたんです。で、「移住するなら本州がいいね」とも。私は「縁側がある暮らし」にすごく憧れがあって。漠然とした思いでしたけれども、いつか叶えばいいなあと思っていました。
そこから「川根本町に移住しよう!」と決めたポイントは何だったんですか?
川根本町に、というか、以前トーマスを見に行った町で「移住促進」をやっているらしいということを夫がホームページで見つけてくれました。お試し住宅もやっているみたいだから、ちょっと利用してみようということで再度川根本町を訪問したんです。
実際に、町に1週間ほど滞在して、役場の人に空き家を5,6件見せてもらいました。また、子どもがいるので学校見学などもさせてもらって、すごく参考になったんですね。
で、その滞在中に、「移住するならこの町にしよう」って夫婦で話したんです。
自分たちでもびっくりするほど早い決断だったんですが、ちょうど私たちがイメージするような空き家も見つかったものですから、それも決め手になりました。
町の雰囲気も良かったんです。北海道には「雄大な自然」がありますが、山や川との距離感という意味では川根本町の方が身近な感じがします。いわゆる「里山」という感じで。庭先に柿や梅の木が普通に植わっている、そんな雰囲気も気に入ったんです。
すごく早い決断でしたね。移住するにあたっての不安とか、来てみてからの生活イメージのギャップなどはありませんでしたか?
以前住んでいた町も田舎でしたので、今とさほど変わることはなく、大きなギャップを感じることはないですね。しいていえば、人付き合いはこっちの方が濃い気がします。
移住するにあたって、あまり人付き合いのことまでは考えませんでしたが、みんな親切にしてくれて。北海道にいた頃よりも人とのつながりは深くなった気がします。
そのぶん忙しくなりましたね。ご近所づきあいも多くなりましたし、知り合いも増えました。何かの折に「ちょっと手伝って」と呼ばれることも増えましたし。
以前は、仕事でパソコンに向き合う忙しさばかり感じていましたが、今は人と向き合う時間が圧倒的に増えたというか。私は「心地よい忙しさ」って呼んでいます。
移住して数年、好きな場所はできましたか?
夏に、両国の川原に行って家族で遊ぶのがすごく楽しいですよ。あと好きな景色といえば、桑野山から沢間にかかる橋の上から見える景色が今も好きですね。歩いて渡るとちょっと怖いですが、山と川に囲まれた感じがいいんですよ。さすがに毎日通っているので慣れちゃいましたけど、今もお気に入りの景色の一つです。
学校の運営・活動などにも関わっているんですよね。どんなことをされていますか?
今年4月から学校のコミュニティスクールのスタッフに加わりました。地域の大人たちが先生になり、子どもたちに色々なことを教える場をつくるという活動をしています。大人と子どもの橋渡し役みたいなイメージですね。地域全体で子供たちを見守り育てていく、そんな環境をつくっていきたいと思っています。
これからやっていきたいことはありますか?
子どもが「子どもらしく、ありのまま」でいられるような環境を、川根本町につくっていけたらと思っています。今の時代、子どもが別の地区の子どもと遊ぶためには親御さんに車で送り迎えをしてもらう必要があるなど結構大変です。
子どもが自分の意思で出かけたり、友達に会いに行ったり、一緒に遊んだりできる、自転車で行くのが危なければバスを使って行く、そんな環境をつくれないかなと。自分も子を持つ親ですから、他の親御さんと一緒に考えていけたらいいなあと思っています。
インタビュー中も、親子連れのお客さんが「てんでんこ」に訪れています。
小さな子が、木のおもちゃがたくさんあることに気づいて大喜び。それを見た舞子さんが「好きなように、好きなだけ遊んでいいんだよ」と、笑って話しかけます。ここに川口さんご一家の「一つの理想」があるんだなと、改めて感じられる時間でした。